生活習慣病について
「健康診断で血圧が高いと指摘されたけど、特に症状ないし…」と、そのままにしていませんか?生活習慣病の多くは、自覚症状がありません。知らぬ間に動脈硬化が進行し、ある日突然心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こします。「息が苦しい」「膝が痛い」というような取り急ぎ困る症状がないために受診が遅れがちですが、5年後も10年後も元気でいるために生活習慣病治療はとても大切です。生活習慣病を指摘されたことのある方はぜひご一読ください。
生活習慣病治療の目標は、数値の改善ではなく生活習慣病の合併症を起こさないことです。そのため、合併症の把握・管理も重要です。当院では生活習慣病の合併症の代表である心疾患を専門としている循環器内科専門医が、血圧のコントロールだけでなく合併症の管理まで責任をもって診療しております。健康診断の結果をお持ちになって、お気軽にご受診ください。

血圧とは、血管の壁に加わる圧力のことで、この圧力が高い状態が続くのが高血圧です。血圧を測定するとき、腕が締め付けられて痛かったことはありませんか?あの力が血管には絶えず加わっているのです。高血圧が続くと血管の壁が傷つき、硬く、もろくなっていきます(動脈硬化)。その結果、脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎臓病などのリスクが高まってしまいます。日本では成人の3人に1人が高血圧といわれるほどありふれた病気なのですが、血圧のコントロールが適切にされている方は約3割しかいないと言われています。

診察室で測定した血圧で120/80mmHg未満が正常血圧とされ、これを超えると血圧が高いほど心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなります。収縮期血圧「年齢+90」が妥当とされていた時代もありますが、医学研究の進歩により現在の基準まで修正されてきました。高血圧と診断されるのは、診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上の場合です。また、そこまで達していない130〜139/80〜89mmHgも「高値血圧」と呼ばれ、生活習慣の見直しが勧められる段階とされています。「血圧が140までいっていないから大丈夫」「頭も痛くないし、元気だから大丈夫」ではないのです。


| 血管は、意外と頑丈です 健常な血管は、普段の血圧の10倍以上——およそ1,500から3,000mmHgの圧まで耐えられたという実験報告もあります。血管は本来、それだけ頑丈にできているのです。血圧の管理は、この生まれ持った頑丈さを損なわずに、長く保つための治療です。今日の数字に一喜一憂せず、日々の血圧を整えていきましょう。 |
診察室では血圧が上がってしまう方(白衣高血圧)がいます。逆に診察室では血圧が正常なのに、ご家庭では血圧が高い方(仮面高血圧)もいらっしゃいます。治療の判断で最も重要視されるのは、普段生活される場で測った血圧の値です。ご自宅で血圧を測る習慣をつけましょう。
1. 血圧計を準備する
手首式ではなく上腕式の血圧計が推奨されており、ドラッグストアや家電量販店で販売されています。上腕式の血圧計で、血圧と脈拍が測定できれば、安価なもので構いません。脈の異常をお知らせしてくれる機能があるとよいです。
2.
朝と寝る前にリラックスして血圧を測定しましょう
朝は起きて1時間以内、トイレを済ませ、朝食やお薬の前に。夜は寝る前に。いずれも3分から5分ゆっくりしてから、連続して2回測定します。足は組まずに椅子に座り、カフ(腕帯)はみぞおちより少し上の高さに合わせるのがポイントです。
3.
血圧手帳に記録しましょう
測定した時間帯・血圧・脈拍を血圧手帳に記入します。血圧は2回測定し、2回ともの血圧の値を記入しましょう。脈の異常(不整脈)の知らせがあれば、数値の右上に*印をつけましょう。血圧が高かった日は、思い当たること(せかせかしていた、寝不足、塩分の摂り過ぎ、薬の飲み忘れなど)をメモしておくと診療に役立ちます。
4.
血圧手帳を担当医に見せましょう
毎日苦労して作り上げた血圧手帳には、診療するうえでとても大事な情報がたくさん含まれています。受診する際、忘れずに医療機関に持っていきましょう。


| その血圧の測り方、どれくらいずれる? へんな血圧の測り方をしていませんでしょうか? 血圧は、測り方しだいで10も20も差が出てしまいます。 |
| よくあるNG | 血圧への影響(目安) |
|---|---|
| 腕を下げて測る | 10〜20mmHg高く出る |
| 腕を上げて測る | 10mmHg低く出る |
| 足を組んで測る | 2〜8mmHg高く出る |
| 背もたれに寄りかからずに測る | 5〜10mmHg高く出る |
| 足が床につかず宙に浮いたまま測る | 5〜10mmHg高く出る |
| 話しながら測る | 10〜20mmHg高く出る |
| トイレを我慢したまま測る | 10〜15mmHg高く出る |
| 正確な診断と治療のために、適切な方法で血圧を測定するようにしましょう。 |
適切な方法で血圧を測って、血圧手帳に数値を記入したら、それでおしまいです。「高い!」「低い!」と一喜一憂する必要はありません(ご自身の体調が良い場合に限ります)。「今日はなんで高いのだろう?」と考えてみることは大切ですが、心配のしすぎはよくありません。手帳を持ってきていただいて、いっしょに考え、治療していきましょう。
治療目標は、基本的には診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満とされています(高血圧管理・治療ガイドライン2025 日本高血圧学会)。ただし、持病やお薬の内容、お身体の調子を考慮して、お一人おひとりに合わせた目標値を設定する必要があります。
血圧が高い方は全員、生活習慣の見直しが必要です。軽症の方なら、生活習慣の見直しだけで目標の血圧まで下がることもあります。「私はお薬を飲んで血圧が下がっているから、生活は気にしなくて良いですよね?」と思われる方もいるでしょう。そんなことはありません。実は、塩分を摂りすぎていると、お薬の血圧を下げる効果が弱くなります。さらに、お薬の腎臓や心臓を守る力まで、弱まってしまうのです。
塩分の摂りすぎは高血圧に大きく関連しています。塩分は塩や醤油だけでなく、味噌、ポン酢、ドレッシングにも多く含まれています。塩分摂取量は1日6g未満が目標とされていますが、下の図を見て思われるように、その目標を達成するのは簡単ではありません。麺類の汁を残す、醤油はかけるのではなくつけるなど、できそうなことから始めてみましょう。

塩分の摂取量を少なくすることが基本ですが、そのうえで、カリウムを多く摂取するようにしましょう。カリウムが塩分の排出を助けてくれるのです。カリウムが多く含まれている食品というと、たとえば、野菜、果物、低脂肪牛乳です。DASH食や地中海食を実践してもよいでしょう。なお、腎臓の病気がある方はカリウムの摂り方に注意が必要ですので、主治医にご相談ください。
肥満の方は減量することでも血圧が下がります。BMI 25未満を目安に体重を維持しましょう。BMI 25の体重=身長(m)×身長(m)×25で計算できます。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を1日30分程度、できれば毎日行いましょう。「息は上がるけど一緒に運動している人と会話はできる」くらいのペースで運動するとよいでしょう。まとまった時間が取れなければ、10分×3回の合計30分でもよいです。スクワットなどの筋力トレーニングも組み合わせられるとなおよいです。運動は高血圧を改善するだけでなく、健康寿命を延ばすことにもつながります。
アルコールを摂取すると一時的に血圧が下がりますが、長期的には血圧が上昇します。節酒の目安は、男性はビール500mL・日本酒1合程度まで、女性はその半分程度までとされています。
6. 禁煙
喫煙により高血圧、脳梗塞、心筋梗塞のリスクが高くなります。また、食道がん、胃がん、肺がん、膀胱がん、肺気腫のリスクも大きくなりますので、禁煙しましょう。紙巻きたばこだけでなく、加熱式たばこ・電子たばこも中止することが推奨されています。当院では、禁煙治療もできますので、禁煙を考えている方はご相談ください。
寒さを感じると血管が縮こまり、血圧が上がります。特に冬場の急な温度差(浴室・脱衣所・トイレ・屋外への移動など)は血圧を乱高下させ、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞、大動脈解離の引き金になります。入浴前に脱衣所や浴室を暖めておく、朝は一枚羽織ってから布団を出るなど、家の中の温度差を小さくする工夫をしましょう。
睡眠不足や質の悪い睡眠は血圧を上げる方向に働きます。ご自身に合った睡眠時間をしっかり確保しましょう。また、大きないびきや日中の強い眠気がある方は、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがあります。睡眠時無呼吸症候群は高血圧の重要な原因のひとつで、お薬が効きにくい高血圧の背景に潜んでいることも少なくありません。放置すると心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めることが知られています。当院ではご自宅でできる検査から治療まで対応していますので、思い当たる方はご相談ください。ご家族のいびきがひどい、眠っている間に呼吸が止まっている、といった場合には、ご本人様に受診を勧めてください。
ストレス過多だと血圧が上昇します。ストレスの原因をすべて無くすことは難しいものですが、しっかり眠る、散歩をして体を動かす、趣味の時間を持つなど、ご自身なりの息抜きの方法を持つことが血圧のコントロールにも役立ちます。
生活習慣を見直しても目標に届かない場合や、もともとリスクの高い方、高血圧の合併症をすでに起こしている方には、お薬による治療を行います。「一度お薬を飲み始めたら一生やめられないのでは」とご心配される方もいらっしゃいますが、必ずしもそういうわけではありません。生活習慣の見直しがうまくいって、お薬を減らせたり、やめられたりする方もいらっしゃいます。大切なのは、血圧が高いまま放置して血管を傷め続けないことです。
・健康診断で血圧が高めと指摘されたことがある
・血圧が130/80mmHg以上のことがある
当院は循環器内科として、血圧だけでなく心臓や血管全体の状態も含めて診療しています。心電図や心臓超音波検査などで、高血圧が心臓に負担をかけていないかも確認できますので、安心してご相談ください。
・高血圧管理・治療ガイドライン2025(日本高血圧学会)
・Fujiyoshi A, et al. Hypertens Res 2012;35:947-953.(EPOCH-JAPAN:血圧分類別の脳心血管疾患死亡リスク・40〜64歳)
・Konig G, et al. Biomaterials 2009.(ヒト血管の耐圧の実測)https://www.researchgate.net/figure/Comparison-of-the-burst-pressures-of-vessels-Physiological-human-saphenous-veins-show-an_fig9_280313112
・血圧測定の誤差要因:米国心臓協会 https://www.heart.org/en/news/2024/06/25/the-rules-for-measuring-blood-pressure-and-why-they-exist /米国医師会 https://www.ama-assn.org/public-health/prevention-wellness/4-big-ways-bp-measurement-goes-wrong-and-how-tackle-them /SunTech Medical https://www.suntechmed.com/parts-and-specs/119-uncategorized/1279-10-factors-that-can-affect-blood-pressure-readings
・Lambers Heerspink HJ, et al. Kidney Int 2012;82:330-337.(塩分摂取量と降圧薬の腎・心血管保護効果)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22437412/